未来球技ブラジル
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千石 「よし、ではルールを説明する」



ロボ 「なぜキサマが仕切る?」



千石 「細かい事は気にしない。いいかね、15点先取した方が勝ちだ。但し、我々は4人の総合得点で15点とする」



太助 「つまり、オレが15対10で負けたとしても、次の東さんは0対10の状態で始められるって事ですね」



ロボ 「おい、それって卑怯だぞ!」



千石 「キミは疲れ知らずのロボットじゃないか。これぐらいハンデがあって当然だよ。あ、それとも、自信が無いのかね?

    だったら、フツーのルールにしてやってもいいよ」



ロボ 「何をう! ぬぬぬ、よかろう、そのルールでやってやる!」



千石 「機械のクセに単純だなぁ」



太助 「まあ、そんなルール意味無いですけどね。オレがヨユーでブッとばしますから」



ロボ 「フン、人間如きが私に勝てると思うなよ」



太助 「オモチャみたいなデザインのヤツにそんな事言われてもなぁ……。サーブ権はくれてやる。オラ、かかって来い!」



千石 「では、『卓球マッスィーン』のサーブから……」



ロボ 「コラ! 勝手にヘンな名前付けるな! 私の名前は『ED209581655432478900785919246619……』」



千石 「長いよ! オマエなんか『卓球マッスィーン』で充分だ! さあ、さっさと始める!」



(SE ホイッスル)



ロボ 「くそ。首洗って待ってろよ……。そりゃ!」



(SE ピンポン球の音)



太助 「な…………」



(SE ホイッスル)



千石 「卓球マッスィーン、1点」



ロボ 「どうした? さっきまでの余裕はどうした」



太助 「フン、ちょっと球が速かったから驚いたが、次はそうはいかん!」



ロボ 「その強がり、いつまで続くかな? そりゃ!」



(SE ピンポン球の音)



太助 「くらえ! 必殺スーパーマグナム!」



(SE ホイッスル)



千石 「卓球マッスィーン2点」



東  「何がしたかったんだ?」



甚八 「太助のオリジナル技です。どんな球でも、その威力を利用して、強力なカウンターを食らわせる技なんですが……。

    相手の球が速いと、技名言ってる間に点取られるんですよね……」



東  「い、意味ねぇ……」



(SE ホイッスル)



千石 「終了〜。卓球マッスィーンの勝ちだ」



ロボ 「当然だな」



太助 「くそ、もうちょっとだったのに……」



東  「15対0はもうちょっととは言わんぞ」



太助 「いやぁ〜…………うっ!」



東  「どうした!」



甚八 「太助!」



太助 「へへ、負けちまったからな……。オレは……ここまでみたいだ……」



甚八 「しっかりしろ!」



千石 「太助くん!」



太助 「千石さん、役に立てなくてスイマセン……。甚八っつぁん、後は……頼…む……」



甚八 「太助! 太助ぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



千石 「く! ボクが軽率だったばかりに……」



ロボ 「さあ、次はどいつだ?」



甚八 「オレだ!」



千石 「甚八くん……」



甚八 「東さん、オレが先に行ってもいいですよね?」



東  「いや、それは構わんけど……あのさ、甚八くん……」



甚八 「千石さん、あのポンコツ人形は、オレがブッ潰しますよ」



千石 「……判った。キミが勝てないなら、おそらくボクも東も勝てないだろう。ボクらの命、キミに預ける!」



甚八 「はい!」



東  「お、おい、千石!」



千石 「男の決意だ。ボクたちは黙って見守ろう」



東  「いや、そうじゃなくてだな……」



甚八 「太助の弔い合戦だ。オレもサービスはくれてやる。来い!」



ロボ 「オマエの仲間はそれで負けたというのに、愚かな……それ!」



(SE ピンポン球の音)



甚八 「うらぁっ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「な、何!」



(SE ホイッスル)



千石 「甚八くん、1点」



甚八 「次はこっちからだ。くらえ、ますらおオーバードラーーーイブ!」



ナレーション

「ますらおオーバードライブとは、何かスゲートップスピンがかかった、甚八の必殺サーブである」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「うおっ!」



(SE ホイッスル)



千石 「甚八くん、2点。スゴイぞ!」



東  「スゲー……」



太助 「ドライブサーブは甚八っつぁんの得意技ですからねぇ」



東  「ああ、太助。やっぱり生きてたか」



太助 「卓球で負けたぐらいで死にはしませんよ」



東  「じゃあ、何で死んだフリなんかするよ」



太助 「いや、その場のノリでつい……。まあ、そのおかげで話的に盛り上がってるワケだし」



東  「…………いや、まあ良いけどな……」



(SE ホイッスル)



千石 「甚八くん、10点。一方的だね!」



ロボ 「く! こうなったら……。緊急システム作動! リミッター解除! アーマーセパレェェェェェェェェトッ!!」



(SE 機械音)



千石 「何! 表面装甲が外れた!」



太助 「一回り小さくなった……」



東  「でも、デザインは変わらないのな……」



ロボ 「フッフッフッ、私の奥の手を使わせるとは、やるな。だが、これで終わりだ!」



甚八 「そういうセリフは、1点でも返してから言いやがれ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「フン!」



(SE ピンポン球の音)



甚八 「何!」



(SE ホイッスル)



千石 「た、卓球マッスィーン、い、1点……」



東  「は、早い……」



太助 「アーマーを脱いで、スピードがあがったのか……」



ロボ 「フッフッフ。おとなしく降参するなら、命だけは助けてやろう」



甚八 「ブリキ人形風情が、人間様ナメてんじゃねぇよ」



ロボ 「フン、強がりを……」



(SE ピンポン球の音)



甚八 「くっ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「うら!」



(SE ピンポン球の音)



(SE ホイッスル)



甚八 「チ!」



(SE ピンポン球の音)



東  「ダメだ。追い上げられて来た」



太助 「大丈夫です。甚八っつぁんは勝ちますよ」



東  「いや、しかし……」



太助 「大丈夫、甚八っつぁんはまだ『アレ』を出してない」



東  「『アレ』?」



太助 「甚八っつぁんにも、奥の手があるんですよ」



東  「奥の手だって!」



(SE ホイッスル)



千石 「卓球マッスィーン、マッチポイント……」



ロボ 「人間にしてはよくやったが……これが限界だな」



甚八 「そういうオマエも、機械の割にはよくやったよ。まあ、ここまでだけどな」



ロボ 「何?」



千石 「甚八くん、降参しても良いんだよ。後はボクが……」



甚八「いや、ブランクがあったせいで、ちょっと慌てましたけど、もう大丈夫ッス。オレが勝ちますよ」



千石 「甚八くん……。判った、最後まで任せるよ」



ロボ 「フン、これで……終わりだ!」



(SE ピンポン球の音)



甚八 「うらっ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「何だと!」



(SE ホイッスル)



千石 「甚八くん、11点!」



ロボ 「バカな、人間が、私のスピードに追いつくなど……」



甚八 「人間様をナメるなって言っただろ? その程度のスピードなんざなぁ、全国レベルにゃゴロゴロいるんだよ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「ぬう!」



(SE ホイッスル)



東  「スゲー。さすが天才と呼ばれただけはあるな……」



(SE ホイッスル)



千石 「甚八くん、マッチポイント!」



ロボ 「く……」



甚八 「キメるぜ! ますらおオーバードラァァァァァァァィブ!」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「その技はもう効かんぞ!」



(SE ピンポン球の音)



東 「返された!」



太助 「いや! ペンホルダーから、シェイクハンドに持ち替えた! 出ますよ!」



甚八 「フォアハンドますらおスマァァァァァァァァァァァァァァァァァァッシュッ!!」



ナレーション

「フォアハンドますらおスマッシュとは、ますらおオーバードライブを返してきた球を、ダイレクトボレーする事により、

 更なる回転をかけ、それはもうスゴイ事にしてしまう、甚八必殺の決め球である」



(SE ピンポン球の音)



ロボ 「何ぃぃぃぃぃぃぃっ!?」



(SE ホイッスル)



千石 「ゲームセット。甚八くんの勝ちだ!」



東 「やったぞ!」



太助 「やったぜ!」



甚八 「オレの、勝ちだ!」



ロボ 「く……」



千石 「さすがだよ、甚八くん! キミならやれると信じてたよ」



太助 「いやいや、さすがは甚八っつぁん!」



甚八 「太助……やっぱり生きてやがったな」



太助 「あら? いつ気付いた?」



甚八 「勝負の途中でな。冷静に考えたら、負けたぐらいで死ぬワケないし」



太助 「まあ、気にすんな。甚八っつぁんも久しぶりの卓球を楽しんでたみたいだし」



甚八 「まあね……」



東  「で、コイツどうする?」



千石 「フム、ボクとしては、命を狙われないなら、放っといても良いんだけど……」



ロボ 「負けた時のプログラムはされている……」



(SE 機械音)



太助 「あ、また一回り小さくなった!」



東  「それでもデザインは変わらないのかよ。マトリョーシカか、コイツ……」



甚八 「あの、オレの気のせいじゃなければ、胸の所にタイマーのような物が……」



東  「確かに。何だか、物凄く嫌な予感がするんだが……」



ロボ 「フフフフフ、ハハハハハハ、ハーーーーッハッハッハッハッハ!」



千石 「逃げろ!」



(SE 大爆発)







オヤジ「ああ、ウチの旅館がぁ……」



千石 「いやぁ、物の見事に吹っ飛びましたなぁ……」



太助 「落ち着いてる場合じゃねぇっすよ」



千石 「まあ、起きた事は仕方ないじゃないか。よもや自爆するとは想定外だったし」



甚八 「そうですね……」



千石 「どうしたんだね、随分スッキリした顔してるじゃないか」



甚八 「いや、オレやっぱり卓球が好きなんだなぁって……」



千石 「ほう、また卓球をやる気になったのかい?」



甚八 「ええ、オレ、また卓球やりますよ!」



千石 「その意気だ! キミなら世界を相手に戦える! 何しろ、未来世界のロボットを倒したんだからね!」



太助 「だから、そんな爽やかにシメてる場合じゃないのでは……って、どうしたんです、東さん、さっきから黙り込んで。

    ツッコミは東さんの仕事なのに……」



東  「いや、ターミネーターだと思ってたのが、オチがプレデターとはな……」



太助 「は?」



千石 「さあ、世界を目指して羽ばたこうじゃないか!」



甚八 「ハイ!」



東  「いや、もういいや……」





ナレーション

   「この後、卓球部に入った甚八は、その才能と努力により、オリンピック5連覇の偉業を果たす事になる。

    そして、何が何やら判らないうちに国連の重要ポストについてしまった千石の尽力により、

    『卓球による各種紛争を解決する法案』が提出され、世界は変革の兆しを見せるのであった……」





東  「なんでやねん……」

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