女体盛りロストテクノロジー和え
女体盛りロストテクノロジー和え


 ロストテクノロジーの回収を終え、エンジェル隊の面々は宇宙屋台でラーメンを食べて行く事にした。
 さっそく屋台の暖簾をくぐると、端からミルフィーユ、蘭花、フォルテ、ミント、 ヴァニラ(そしてノーマッド)の順番に腰を降ろす。
「オヤジ〜、宇宙ラーメン5つ頼むよ」
 慣れた様子でフォルテが注文をする。
「あいよ、宇宙ラーメン五丁。まいどあり〜」
 親父の威勢の良い声が屋台の中に響き、手際良く調理が開始される。
「へい、お待ち〜」
 ほどなくして、ラーメンが彼女たちの前に差し出された。
「わ〜、おいしそう。いっただっきま〜す」
 律儀に両手を合わせていただきますを言うと、ミルフィーユは麺を口に運んだ。
「うわぁ、おいしいですぅ」
「あ、ミルフィーユ、ちょっとコショウ取ってくれる?」
 おいしそうにラーメンをすするミルフィーユノ、蘭花が声をかける。
「コショウですか〜? え〜と、どこに……。あ、あったぁ! ハイ、蘭花さん」
 ミルフィーユはコショウらしき物が詰まった瓶を蘭花に手渡した。
「サ〜ンキュ〜。そ〜れっと」
 瓶を受け取った蘭花は、その中身をドバドバとラーメンにふりかけた。
 さすが激辛好きの蘭花と言えようが、その量の多さに隣に座っているフォルテは顔をしかめた。
「アンタかけ過ぎだよ。ホラ、アタシにもコショウ回しとくれ」
「は〜い」
 瓶の中身をタップリとふりかけ、蘭花はフォルテに瓶を手渡した。
「半分近く無くなってるじゃないか、ったく……」
 フォルテは瓶の中身をふりかけようとして、ふとその手を止めた。
「どうかいたしまして、フォルテさん? 使わないのなら、コショウを貸していただけませんか?」
 コショウの瓶を持ったまま考え込み始めたフォルテを、ミントが不思議そうに見つめる。
「何か、このシチュエーションに強烈なデジャヴを感じるんだが……。ミント、回収したロストテクノロジー、
オマエが持ってるんだよな?」
「へ? わたくしは持ってませんわ。アレは直接回収したヴァニラさんが持っているのでは……」
 ミントは不安げに隣のヴァニラを見た。当のヴァニラは無表情でラーメンをすすっている。
「ヴァニラ、オマエがロストテクノロジーを持っているのか?」
《何言ってるんですか。確かに回収したのはヴァニラさんですが、その後、現場責任者であるフォルテさんに、
ちゃんと渡してたじゃないですか!》
 ヴァニラが答える代わりに、その隣に置かれていたノーマッドが口を挟む。
「あれ? そうだったっけか?」
《まったく、アナタ方はどうしてそういい加減なんですか! ちょっとはヴァニラさんを見習って……》
「ああ、そうだ! 確かにアタシが預かったけど、任務完了の報告をする時、蘭花に預けたよな?」
「え、そうだったけ〜?」
《……無視かよ》
 ボヤくノーマッドを尻目に、蘭花は己の記憶を辿った。
「あ! 確かアタシが預かった後、ミルフィーユが見たいっていうから渡したわよね?アンタ、アレどうしたの?」
「え? ちゃんと持ってますよ〜って、あれ〜? どこに入れたんだっけ……」
 ミルフィーユは軍服のポケットをゴソゴソとまさぐった。
「あ、ここに置いたんだった〜。ハイ、どうぞ」
 満面の笑みを浮かべながら、ミルフィーユはテーブルに置いてあった瓶を差し出した。
 その瓶には『コショウ』と書いたラベルが貼ってあった。
「ミルフィーユ、それ『コショウ』って書いてあるけど……」
 何となく、イヤな予感を感じた蘭花は、冷たい目でミルフィーユを見つめる。
「ほえ? あ、そっちの瓶でした〜」
 状況が飲みこめていないミルフィーユは、のん気にフォルテが手にした瓶を指差した。
「ちょ、ちょっとミルフィーユ! アンタさっきコショウ取ってって頼んだ時、この瓶を渡したわよねぇ!」
「あ、間違えちゃいました〜」
「アンタねぇ! 前にもこんな事あったじゃないの!! どうしてくれんのよ! アタシ食べちゃったじゃない!!」
 蘭花は握り拳でミルフィーユの頭を挟みこむと、グリグリと折檻した。
「ふえ〜ん、わざとじゃないですぅ〜」
「わざとだったら、この程度で済むかーーーーーっ!!!!」
 さらに折檻を続ける蘭花に、ミントは冷ややかに声をかけた。
「でも、前回と違って、被害者は蘭花さんだけなのが不幸中の幸いですわね」
「ミント! アンタねぇ……」
「まあ、落ち着け蘭花。とりあえず、急いで帰って検査だ。
どんな影響が出るか判ったモンじゃないからな。ホラ、行くよ、みんな!」
 フォルテは自分のラーメンを一気にかきこむと、代金を支払って紋章機に乗り込んだ。
「ふえ? わたし、まだ食べ終わってません〜〜〜!」
「ミルフィーユさん、状況が判ってます?」
 ハンカチで口元をぬぐいながら、ミントも軽やかに紋章機へ戻る。
「ごちそうさまでした……」
《ああ、本当ならヴァニラさんは、感謝を込めてもっと味わって食べるというのに、 人騒がせな人たちのために、
こんなに急いで食事をするなんて。ヴァニラさんが消化不良でも起こしたらどうするつもりなんですか、まったく……》
「カキ込みご飯……」
 ぼやくノーマッドを抱え、ヴァニラもまた機内へ戻った。
「あぁん、待ってくださいよ〜」
 名残惜しげにラーメンを残し、ミルフィーユも慌てて追いかけてゆく。
『蘭花、早くしな!』
 クロノクリスタルを通して聞こえるフォルテの声に、蘭花はガックリと肩を落とした。
「なんでアタシだけ〜〜〜〜っ!! アタシって宇宙一不幸な美少女よ〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
 蘭花の魂の叫びをこだまさせ、エンジェル隊一同は基地への帰路を急いだ。
 

数日後。
「調査の結果が出ましたわ」
 資料のファイルを抱えて、ミントがエンジェルルームに入ってきた。
 あれから急いで帰還したエンジェル隊は、大慌てでロストテクノロジーの調査を依頼し、
それと同時に蘭花に各種検査を受けさせた。
 検査の結果、身体的な変化は何一つ見られず、ひとまずはホッと胸を撫で下ろした蘭花で あったが、
ロストテクノロジーの正体が判らないうちは、安心出来ない。
「あ、アレって一体何だったの? アタシどうなっちゃうの!?」
 蘭花はあたふたとミントに駆け寄った。
「え〜っとですね。結論から申し上げれば、アレを使用した事により、肉体的な変化は 起こりませんわ。前のように透明になったりはしない、という事ですわね。ただ……」
「ただ、何よ? 勿体ぶらずに早く教えてよ!」
「ええ、アレは肉体ではなく、精神に作用するようですの。アレを摂取した人間は、 『ジェンダーリバース現象』を起こすらしいですわ」
「じぇ、じぇんだー……何だって?」
「『ジェンダーリバース現象』まあ、カンタンに言ってしまえば、アレを摂取した人間は、
物の見方や考え方が、男性化ないしは女性化してしまうという事ですわ」
「え〜と、つまり……?」
《つまりはですね、ロストテクノロジーの影響で、蘭花さんの精神が男性化するって事ですよ》
 察しの悪い蘭花に、ノーマッドが結論を述べる。
「それはアレかい。前にアタシがヒドイ目にあったロストテクノロジー箱みたいなモンかい?」
 フォルテは過去の嫌な記憶を甦らせながら言う。
「そうですわね。アレに近い物ですわ。あの時、フォルテさんは肉体が男性化しても、心は女性の ままでしたが、今回はアレの逆バージョンだと思っていただければ」
「え〜、じゃあ、アタシ男になっちゃうワケ〜!? そんなのイヤ〜っ!!」
 蘭花は頭を抱えてさめざめと泣くと、キッとミルフィーユを睨み付ける。
「ミルフィーユ〜、アンタのせいでこんな事になったのよ〜っ!!」
「ふえ〜ん、ごめんなさ〜い。ケーキのイチゴあげますから、許してくださ〜い」
「アタシは子供か!?」
 蘭花は素早くミルフィーユが食べていたケーキからイチゴを奪って口に放り込むと、 再び握り拳でミルフィーユの頭を挟み、グリグリと折檻した。
 その様子を見ていたミントは、ふと何かに気付いた。
「でも、あんまり変わってるようには見えませんわね?」
「言われてみりゃあそうだなぁ」
 フォルテもミントの言葉に頷く。
「二人とも、それどういう意味!?」
 ミントたちの会話を耳ざとく聞きつけた蘭花はミルフィーユにヘッドロックをかけたまま、二人に詰め寄った。
「いや、だからさ。精神がオトコになってる割に、普段のアンタとあんまり変わらないと思ってさ」
「正直な所、違和感ゼロですわ」
「変わらぬ事は良き事かな……」
《アレですね。元々蘭花さんの精神は男っぽいというか、男そのものという事ですね。 これでアナタの言動が
やたらに乱暴なのも説明がつきます。ヴァニラさんの爪の垢でも飲めば、 ちょっとは女らしくなれたというのに、
つくづく愚かな人ですね、アナタは。あ、何をするんです!?  うわぁぁぁぁぁぁっ!!》
 銀河の果てまで飛んで行け、といわんばかりの勢いでノーマッドを蹴飛ばし、 蘭花は力尽きたようにその場へ座り込んだ。
「やっぱりアタシってチョー不幸〜!」
 ミルフィーユへの折檻の手を止め、蘭花は再び泣き始めた。
 その蘭花の前へ、ヴァニラが歩を進める。
「何? ヴァニラ……」
「神のお告げがありました。すべてはあるがままに……。受け入れれば吉です。
それでは、お祈りの時間ですので……」
 そう言って壁際に転がったままのノーマッドを拾い上げると、ヴァニラは自室に向かった。
「受け入れられるかっての! ああ、わたしも神頼みでもしたい気分だわ……」
「まあ、前の透明化の時だって、時間が経てば元に戻ったんだし、大丈夫だって」
 さすがに憐れに思えてきたフォルテは、蘭花を元気づけようと、ことさら明るい口調で言う。
「だから心配すんなって。効果を消す方法だって研究してるんだからな」
「フォルテさぁん……」
「とりあえず、アタシらは定期パトロールに行ってくるから、アンタは休んどきな。 ミルフィーユ、オマエも残って
書類の整理しときな。まだ終わってないんだろ?」
「え〜書類整理ですかぁ。……わかりました〜」
「よっし、行くよ、ミント」
「了解ですわ」
 フォルテはミントを伴い、紋章機の格納庫へと向かった。
 
 30分ほど経ち、少し落ち着きを取り戻した蘭花は、手持ち無沙汰なのもあり、ミルフィーユの書類整理の
手伝いをしていた。 そこへ、ウォルコットが姿を現した。
「おや? 蘭花さんとミルフィーユさんだけですか?」
「え、何〜ウォルコット中佐〜」
 蘭花は気だるげにウォルコットを見る。
「いえ、ちょっと急ぎの仕事が入りまして、今すぐ惑星スミッコまで行ってもらいたいのですが」
「え〜、惑星スミッコっていったら、銀河辺境のさらにヘンピな所じゃないですかぁ。
アタシ、ロストテクノロジーの影響で、大変な事になってるんですよ〜」
 膨れ顔で不平を述べる蘭花だが、ウォルコットもその辺りは飲みこめていた。 蘭花に近付くと、そっと耳打ちする。
「事情は聞いています。ところで蘭花さん。惑星スミッコは、去年大型リゾート惑星になったのはご存知ですか?」
「へ? う、うん、話は聞いてるけど……」
「確かに遠い星なので、そうそう行く機会も無いでしょうが、紋章機ならひとっ飛びですよね?」
「それはそうだけど……中佐、何言って……」
「まあまあ、話は最後まで聞いてください。ロストテクノロジーで精神が男性化しているという事ですが、
もしかしたら女性的な心を持ち続ける事で、影響を打ち消す、あるいは対処法が見つかるまで、
効果を遅延させる事が出来るかもしれませんよ?」
「そうかなぁ……? そうだとしても、それと今度の仕事とどう関係あるのよ?」
「判りませんか? 場所はリゾート惑星です。お金持ちのイイ男がたくさんいるかも……」
「蘭花・フランボワーズ、ただちに惑星スミッコへ向かいまぁす」
 金と男に目が眩んだ時独特の甘ったるい声を発し、蘭花はエンジェルルームを飛び出した。
「あぁん、待ってくださいよ〜。わたしも行きます〜」
 その蘭花を慌てて追いかけるミルフィーユ。
 
 かくして蘭花とミルフィーユは惑星スミッコへ向かった。
 しかし、蘭花をはじめ、エンジェル隊の全員は気付いていなかった。
 蘭花にロストテクノロジーが作用するのは、これからだという事に……。



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