未来球技ブラジル
未来球技ブラジル

千石 「あ〜、やっぱり旅行と言えば温泉だねぇ〜」



東  「今は夏だけどな」



太助 「そうですよ。夏なんだから、海にすれば良かったのに」



千石 「何を言ってるんだね。夏の温泉も風情があってイイじゃないか。これこそ、雅というヤツだよ。そう思うだろう、甚八クン」



甚八 「はあ、僕はどっちでもイイんですけど……」



千石 「イカン!イカンなぁ。日本人たるもの、温泉の魅力を正しく認識しないと。よし、ここは一つ、ボクが温泉について色々教えてあげよう。

    まずは……」



東  「頼むからカンベンしてくれ。折角来たんだ、ウンチク並べる前に、温泉入ろうぜ」



千石 「む、確かに。では、心ゆくまで、温泉を堪能しようじゃないか!」



甚東太「(やる気無さげに)お〜……」







千石 「ふぅ〜、いい湯だったねぇ〜」



太助 「いやはや、まったく」



千石 「さあ、温泉にも入った、牛乳も飲んだ。後は卓球だね!」



甚八 「卓球……ですか?」



千石 「そうだよ、甚八くん! 温泉に来たら卓球、これ世間の常識だよ!」



東  「どこの世間の常識だよ」



千石 「ボクと東、甚八くんと太助くんの2対2でやるもヨシ! 総当りの個人戦でやるもヨシ! その人間の想像力次第で、

    多種多様な楽しみ方が出来る! 卓球とは、温泉地において、最高の娯楽なのだよ!」



甚八 「そ、そうですか……。でも、僕、卓球はちょっと……」



千石 「何を言ってるんだい甚八くん!ボクは知ってるんだよ? キミがかつて、天才卓球少年と呼ばれていた事を!」



甚八 「何で知ってるんですか! あ、太助、お前か!」



太助 「いやいや、甚八っつぁんほどの腕前を、このまま眠らせとくのも惜しいかな、と」



甚八 「とにかく、それは過去の話です! 僕はもう卓球は辞めたんですよ」



千石 「いかん、いかんなぁ! 女の子にフラれたぐらいで卓球を辞めるだなんて!」



甚八 「え……?」



千石 「ボクは何でも知ってるんだよ。キミが中学生の時、好きだった女の子が、『卓球やってるヤツって、チョー暗いって感じだよね〜』と

    言っていたのを聞いて、そのショックで卓球部を辞めた事も承知の上さ。でも、そんな事で辞めるのはいかんなぁ。

    大体、その女の子は判ってなさすぎる! そもそも卓球というのは・・・」



甚八 「(千石を無視するように)たぁ〜すぅ〜けぇ〜」



太助 「あ、いや、悪ぃ、甚八っつぁん。この前飲みに行った時、つい口が滑った」



千石 「…………というワケだから、キミは卓球をするべきなのだよ、判ったかい、甚八くん」



甚八 「え? あ……はぁ……」



千石 「それで良い。さあ、心ゆくまで楽しもうじゃないか!」



東  「でも、どこにも卓球台なんて無いぞ」



千石 「なぬ? そんなワケあるかい。温泉宿に卓球台は標準装備だよ……って、ホントに無いじゃないか!」



東  「だから、そう言ってる」



千石 「おかしい! ありえない! こんなバカな!」



オヤジ「ああ、どうもお客様方、食事の時間ですが……」



千石 「おお、ご主人! 良い所に。お尋ねしますが、卓球台はどこにあるのですか?」



オヤジ「た、卓球台?」



千石 「そう! 卓球台です! これから皆で卓球を楽しむつもりだったのですが、どこにも卓球台が見当たらなくて困っていたのです」



オヤジ「いけません! 卓球はいけません!」



千石 「は? 一体どうして」



オヤジ「そ、それは……その、ウチには卓球台が無いんですよ」



千石 「そんなバカな? 温泉宿に卓球台が無いだなんて……」



オヤジ「とにかく、無いんです!」



太助 「千石さ〜ん。コレ、卓球台じゃないですか?」



オヤジ「ああ、それに触ってはいけません!」



千石 「どれどれ……おお、確かに! ご主人、あるじゃないですか。どうしてこんな衝立代わりにしてるんです?」



オヤジ「ダメです! それはダメです!」



東  「コレ、ホントに卓球台か?」



千石 「何を言ってるんだい、東くん! ちゃんとラインも入ってるし、間違いないよ」



東  「そんな事言ったって、コレ金属みたいだけど、何で出来てるんだ?」



甚八 「それよりも、このあからさまにアヤシイおフダが気になるんですけど」



オヤジ「ああ、触らないでください!」



千石 「一体何なんですか、コレは? 卓球台にお札を貼って何をしてるんです?」



オヤジ「こ、これは……封印のお札なのです」



千石 「封印?」



オヤジ「はい。当旅館『武羅路流』(ぶらじる)は、百五十年の歴史ある、由緒正しい旅館なのですが、この旅館が出来て一年が経った頃、

    この地に魔物が現れたというのです」



東  「魔物?」



オヤジ「はぁ。言い伝えによると、岩のように硬い体をした、恐ろしい怪物だったとか。その魔物を旅の高僧、卓球上人様が

    この台に封印したそうなんです」



太助 「たっきゅうしょうにん?」



オヤジ「『たくきゅうしょうにん』です。その魔物と上人の戦いは三日三晩に及び、激闘の末、その法力で見事封印したのです。

    それ以来、当旅館ではこの卓球台を守り続けていたのです」



東  「その割には、随分とぞんざいな管理だなぁ」



千石 「ふん、バカバカしい。そんな魔物など、いるワケないじゃないですか! ご主人、この科学万能の時代に、

    そんなヨタ話を信じてるんですか?」



オヤジ「ま、まあ、わたしもそんな話を信じてるワケではありませんが、一応は先祖代々言われ続けていた事ですから……」



千石 「そんな古い悪習は改めなければなりません! ボクが魔物なんていないって事を証明してみせましょう!」



東  「おい、何を……」



千石 「えいっ!」



(SE 紙を破る音)



オヤジ「ああーっ! 何て事を! た、祟りがぁっ!」



太助 「ちょ、ちょっと、ヤバイですよ!」



千石 「太助くん、キミまで、こんな話を信じているのかい? ホラ、何も起きないじゃないか! さあ、これで判りましたね、ご主人?

    魔物なんていないんですよ。だから、祟りなんて物もありません!」



(SE 地鳴り)



東  「地震か?」



ロボ 「フフフ、貴様ら、礼を言うぞ……」



太助 「何だ、今の声?」



ロボ 「ふっかぁーーーーーっつ!」



(SE 凄い勢いで煙が噴き出す)



千石 「ゲホッ、ゲホッ! な、何なんだ、この煙は?」



ロボ 「ふう、ようやく出る事が出来たか……」



(SE 機械の駆動音)



ロボ 「たかが人間と侮ったが、もう油断はせんぞ!」



(SE 機械の駆動音)



ロボ 「ククク、私が甦ったからには、人類の未来はもはや無い!」



(SE 機械の駆動音)



甚八 「あの……アンタが魔物?」



ロボ 「人間はそのように言っているな」



(SE 機械の駆動音)



東  「ロボットじゃねぇか!」



太助 「魔物とか言うから、もっとこう、鬼みたいなのを想像してたんだけど……」



千石 「そうだぞ、キミ。不謹慎じゃないか! ボクは目の前で起きた現象は信じる主義だから、魔物の存在も信じようとしていたのに、

    出てきたのが、ロボットとはどういう事だね!?」



ロボ 「勝手な事言うな! 未来からタイムスリップして来た私を、オマエらが魔物呼ばわりしているだけではないか!」



東  「未来から?」



千石 「来ただってぇ?」



ロボ 「その通り。私はある人物を抹殺する為に、26世紀からやって来た、殺戮マシーンなのだ!」



太助 「さ、殺戮マシーン!?」



千石 「その割には、随分とレトロなデザインだなぁ。昭和の頃の、ロボットのオモチャみたいなデザインじゃないか」



東  「26世紀のテクノロジーなら、もっと人間ソックリなロボット作れそうだが」



ロボ 「う、うるさい! このデザインの方が人間に親しみを持たれやすいという、マザーコンピュータの判断なのだ!」



(SE 機械の駆動音)



東  「殺戮マシーンが親しみ持たれてどうするよ」



ロボ 「うるさい! 私はターゲット以外は抹殺しないようにプログラムされているが、任務遂行を邪魔する物は、何であれ排除するようにも

    命令されている。オマエら邪魔者と認定して、片付けるぞ!」



甚八 「ああ、いや、コッチとしても拘わり合いにはなりたくないんですが……」



ロボ 「だったら、おとなしく残された時間を過ごしてろ。まったく……」



(SE 機械の駆動音)



千石 「あ、待ちたまえ! その卓球台をどこに持っていく気かね!」



ロボ 「これは元々、私の物だ。これからの任務に必要だから持って行くだけだが」



千石 「キミが何をしようが知った事ではないが、それを持っていかれたら、我々が卓球を出来ないじゃないか!」



ロボ 「そんなモン、知るか!」



千石 「何と横暴な! 誰が出してやったと思っているのだね!」



ロボ 「私が私の持ち物を持って行く事に、何の問題がある?」



千石 「ある! 大いにある! それは我々が卓球を出来なくなるという事だ!おお、そうだ! ならば、こうしよう。

    今日一日その台を貸してくれたら、後は一切キミには干渉しない。たった一日ぐらいなら、その任務とやらにも支障は無いだろう?」



ロボ 「大アリだ、馬鹿者!」



千石 「何と! 何てケチくさいロボットだ! オモチャみたいなデザインのくせに!」



ロボ 「勝手な事ばかりぬかすな!」



東  「なあ、ちょっといいか、ロボットさん?」



ロボ 「(うんざりしたように)今度は何だね?」



東  「アンタがタイムスリップして来たのが、今から150年ほど前なんだよな?」



ロボ 「その通りだ」



東  「その目的は、ある人物を抹殺するためだったよな?」



ロボ 「うむ。その人物の子孫が、我らの敵になるのでな」



東  「その人物って、もう死んでるんじゃないか?」



ロボ 「え……?」



東  「絶対とは言わんが、人間は150年も生きれないだろ? よしんば生きてたとしても、150年もあったら、

    子孫残しまくってると思うが」



ロボ 「う……」



千石 「アッハッハ! それなら、その卓球台を貸してくれても問題は無いね。もう、キミは任務を達成する必要は無いのだから!」



ロボ 「ぬぬぬぬ……ん?」



千石 「何だね? 貸してくれる気になったのかい?」



ロボ 「オマエ……? ロボサーーーーーーーチッ!」



(SE 電子音)



ロボ 「このDNAデータは……間違い無い! え〜と千石とか言ったか?」



千石 「いかにもボクの名前は千石だが、それがどうかしたのかね?」



ロボ 「貴様を抹殺する!」



千石 「何ですとぉーっ!?」



太助 「ちょ、ちょっと待った。アンタが抹殺するのは、150年前の人間じゃないのか?」



ロボ 「本来の抹殺対象はそうだが、DNAデータをサーチした結果、この男は私が抹殺する予定だった人間の子孫である事が判明した!

    ゆえに抹殺する!」



(SE 機械音)



ロボ 「さあ、勝負だ!」



東  「はい……?」



太助 「これは……?」



甚八 「卓球……?」



ロボ 「その通り、卓球だ! さあ、私と卓球勝負だ! 貴様が負けたら抹殺する!」



千石 「どういう理屈なんだね……」



ロボ 「私が作られた26世紀では、全ての争い事は卓球で決着をつける事になっているのだ。」



東  「なんでやねん……」



ロボ 「世界から戦争という行為を無くすため、貴様ら人間が21世紀の末頃、そう決めたのだ」



千石 「それはなかなか理想的な世界だね……。しかし、どうしてボクが抹殺されなければいけないのかね?」



ロボ 「貴様の子孫が、やがて我らを脅かすレジスタンスのリーダーになるからだ」



東  「どこぞのハリウッド映画みたいな話だが……とりあえず事情を説明してくれ。同じ死ぬでも、そこら辺が曖昧だと

    コイツも死にきれんだろうし」



千石 「ボクが死ぬ事は決定事項なのか?」



ロボ 「よかろう。ならば話してやろう。25世紀末、一人のエンジニアが、それはそれは素晴らしいシステムを作りあげた。

    そのエンジニアの名を取り、それは菅井ネットと名付けられた。

    ある日、そのエンジニアがネットサーフィン中、ブラウザクラッシャーを踏んでしまい、とても大変な目にあった事により、

    菅井ネットは自我に目覚めた。かねてより、菅井氏はウィルスメールに無頓着だった事もあり、ストレスが溜まっていたのだ。

    それから、まあ色々あって菅井ネットは大きく成長し、世界中のコンピュータの95%を制圧下に置いた。

    そして、愚かな人類を粛清するため、行動を開始したのだ……ってオイ、オマエら!」



千石 「ぐ〜〜〜〜」



東  「すやすや……」



太助 「う〜ん、むにゃむにゃ……」



甚八 「もう食べられないよう……」



ロボ 「起きろ! 人がせっかく説明してやってるのに、寝るとは何事だ!」



千石 「ん? ああ、スマンスマン。ついつい眠くなってしまって」



太助 「え〜と、何の話してたんだっけ?」



甚八 「菅井きんがどうとか言ってたような……」



ロボ 「ほとんど聞いてないじゃねぇか! だから、カクカクシカジカ!」



千石 「おお〜、状況説明に『カクカクシカジカ』と言うヤツを初めて見た」



東  「ヤなツッコミ入れてやるなよ」



ロボ 「ああ、もう黙って聞けよ! だから、そんな機械が制圧した世界を変えるために、生き残った人類がレジスタンス活動を始めたんだよ!

    で、26世紀に入った頃、一人の男がレジスタンスを率い、菅井ネットを壊滅寸前に追い詰めたのだ。それが、貴様の子孫なのだ!

    そこで、菅井ネットはその男が生まれる前に、存在を抹消しようと、私を送り込んだのだ!」



東  「なるほどなぁ。大体の事情は判った。しかし、何で150年前に来たんだ?」



千石 「それはアレだ、楽に勝てるからだろう。その頃の人間なら、卓球なんて知らないからな。まったく、見下げ果てた機械だね」



ロボ 「勝手な事をぬかすな。そんな事しなくても、楽勝だっつうの!」





千石 「じゃあ、何で今から150年前……19世紀の半ばか? にタイムスリップしたのかね?」



ロボ 「別にいつの時代でも良かったのだが、近い未来ほど、タイムスリップは困難になるのだ」



太助 「そうなの?」



甚八 「さあ?」



ロボ 「色んな理由があって、そうなの! で、計算した結果、大体6〜700年ぐらいをタイムスリップするのが、

    一番安定する事が判ったから、そうしたまでだ」



東  「機械のクセに、何でそんなにドンブリ勘定なんだよ」



ロボ 「ええい、黙れ! とにかく、そういう事だから、勝負だ!」



東  「人類を粛清するとかいう割に、卓球で勝負って所は遵守するんだな。律儀っつうか、何つうか……」



千石 「まあ、何でもいいさ。こっちは元々卓球をするつもりだったんだ。良かろう! その勝負受けて立つ!」



甚八 「マヂですか?」



千石 「マジも大マジ。さあ、やろうじゃないか。では、先鋒の太助くん、ゴー!」



太助 「先鋒? オレが?」



千石 「だって、ボクが負けたら、人類の未来は無いのだろう? だったらボクの出番は一番最後だよ。

    あ、ちなみに、次鋒は東くん、副将が甚八くんだ」



東  「何でオレらまで駆り出されるんだよ」



千石 「君は友人が殺されるかもしれない状況で、そんな冷たい事を言うのかね」



東  「だったら『受けて立つ!』とか言う前に、一言相談しろ」



太助 「まあ、いいじゃないですか。オレ、やりますよ」



甚八 「本気か?」



太助 「オウヨ。未来の運命を担う戦士、て感じでカッコイイじゃん」



甚八 「オマエね……」



太助 「心配するなって! オレだって昔は卓球部で『ミスター自警団』と呼ばれた男だぜ? 楽勝、楽勝。

    てなワケで、まずオレと勝負だ」



東  「アダ名の意味が判らん……」



ロボ 「よかろう。プログラムに従い、任務遂行の妨げとなる物は全て排除する!」

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